こうしてうつになってから私の心の中を占めているのは「悲しみ」とその悲しみが再び訪れるのではという「不安」です。3人目の子供も亡くして、その悲しみに私の心は耐えられなかったのだろうと思います。今思うと、4年前、私は自分の中にわき上がってくるものが何であるかすらわからない状態でした。毎日必死でもがいて、叫んで、でもどこに助けを求めていいのかわからなかったんです。
一人目の子供を亡くしたとき、、、もう危ないかもしれない状態で病院に入院になったとき、主人がそばにいてくれなかった。入院になったと電話したとき、家で目覚めたばかりでコーヒーを飲んでいた。私はあの時すごく不安でどうしても1人で病院に行くのが怖くて、何度も主人に付いてきて欲しいといったのに、こんなに朝早くから、、、と言われ、付いてきてはくれなかった。私にはこのことがいつまでも頭の中から離れなかったんです。主人は子供がどうなろうと、のんきに家でコーヒー飲んだり出来るんだと私は1人で思いこんでました。主人がそのあと、このことについて何度も謝ってくれ、それからの主人はすごく私の体を気遣ってくれ、でも、私は素直に主人の好意を受け取ることが出来なかったんです。だから、子供を亡くした悲しみを主人に言ったって、主人にはわかりっこないと勝手に決めてました。
2人目、3人目の子供を亡くしたときは、主人は本当に私のことを気遣ってくれました。だけど、やっぱり私はその主人の気持ちを理解することも出来ず、勘違いをしたまま何度も何度もこの1人目の子供の時のことを言っては主人に暴言を吐き、暴れ、かみつき、殴り、、、の繰り返しでした。でも主人はただただ謝ってくれていました。素直に受け取れない私に、何度も何度も。。。
あれから4年が経ち、ゆっくりではあったんだけど、少しずつ私の中でも主人の気持ちがわかるようになってきました。主人も一人目の時から悲しかったんです。辛かったんです。でも、ただでさえ私が混乱してしまっているのに、自分も一緒に混乱していてはだめだと私を支えてくれようとしてたんです。でも、私にはその主人の優しさを感じ取るだけの余裕が全くなかった。診察室で、産婦人科の先生に「今回もだめですね」と言われるのはいつも私。辛い処置を受けるのもすべて私。私は私のことで精一杯で本当に主人の気持ちなんて理解しようともしていなかった。こんな私を主人は4年間も支えてくれた。急がなくていい、ゆっくりでいいから、何もしなくていいから休憩してと、家事もすべて引き受けてくれている。そんな主人をみていて、私は本当にこれまで主人に対して酷い態度をとってきたんだと思う。働いて、疲れて帰ってきてから、家事をやってくれる。入院中も仕事の途中を抜けて、夕方お見舞いに来てくれた。来られないときは必ず夜に電話をかけてきてくれた。何もしなくていいから、とにかくゆっくり休んで。そういって、本当に私を支えてきてくれた。そんな主人の気持ちに気づくのに私は4年間もかかってしまったんだ。だけど、今ならはっきりとわかる。主人だってすごく悲しかったし辛かったし、大きく育つことの出来ない私たちの子供に何もしてあげられない悔しさを主人だって感じていたんだと。
まだ私は時々いいようのない悲しみに包まれてしまう。子供の話題、町で子供連れを見かける、ニュースでやたら少子化少子化というそのたびに私の心は悲しみを思い出し、言いしれぬ気持ちがこみ上げてくる。でも、今はその気持ちをそのまま主人に伝えることが出来る。主人もそして同じように悲しんでることもわかる。本当に時間がかかったものだと思う。今まで助けてきてくれた主人にはいくら感謝しても感謝しきれないくらい。
でも今はまだ、うつの薬を飲んでるから、妊娠することは出来ない。そしてもしまた妊娠できることになっても、きっとまた妊娠するまでに時間がかかる。そしてそうやってこの世に授かった命が本当に私のお腹の中で大きくなってくれるのかわからない。まだ、妊娠することは私にとってはものすごい不安なことで、怖い。今の主治医の先生はその怖さも、不安もいつかは和らいで、また子供を授かれるようになるといってくれる。すべては時間が解決してくれると。
4年前は自分でもどうしようもない怒りにも似た悲しみだったけれど、今は違う。主人にこの悲しみや辛さを話すことも出来るし、同じような気持ちを共有することも出来る。亡くした3人の子供達は私たち夫婦の子供なんだ。私が1人で抱え込まなくてもいいんだ。やっとそう思えるようになってきた。まだうつ病がいつ治るかのめども立ってない。そのあとには不育症の検査もしないといけない。まだまだ子供に出会えるまでは時間がかかる。でも、私の中で、少しずつではあるけれど「悲しみ」の形が変わってきている。主人に支えられながら、きっとこの悲しみを乗り越えられるんだろうなって思えるときがある。主人と一緒で本当によかったと、今は心からそう思える。