星の王子さま」の一節にこんな文章があります。
『あんたが、あんたのバラの花をとてもたいせつに思っているのはね、そのバラの花のために、ひまつぶししたからだよ』
『心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは、目に見えないんだよ』
うつ病になる前、うつ病になってから今までの間、私はのんびりと自分のひまな時間を「ひまつぶし」と思って何かのために費やした事はほとんどない気がする。病気になってからはいよいよいろんな事に焦っている気がする。でも、何かのために「ひまつぶし」をするという事は、そのものを上っ面だけでなく、心でよく見る事につながるんじゃないか。結局はそのものについて、大切だと思う気持ちが生まれ、自分の中の大切なものになることなんじゃないかと。今の私はすごくたくさんの時間ばかりを持っている。だけど、私は何かを心からゆっくりと見ようという気持ちになれなかった。どちらかというと、そう言った時間は無駄なように思えた。早く何か形になる事をしたい。早く元気になってみんなと同じような時間の流れの中で過ごしたい。でも、そうする事は実は自分の事を心から知ろうとせず、自分の本当の心の言葉を聞き逃し、上っ面だけの自分の人生を歩もうとしてるだけなんじゃないかと思える。いろんな事に傷ついてしまった私の心。その心を私自身くらいはゆっくりと見てあげて、心の悲鳴を聞いてあげて、大切に思ってあげなくちゃいけないんじゃないかと。
作者であるサン=テグジュペリの言いたかった事がこんな事だったのかどうかは、私は知らない。でも、私は「星の王子さま」の本を読んで、私に今与えられているたくさんの時間を、もっとしっかりとゆっくりと使っていかなくちゃいけないんじゃないかと思う。
時間がないと、こんな事をしている暇などないといいながら、早く病気を治して、特急列車に乗ったように何にも目もくれず、すごいスピードで日々を過ごしていこうとする。私はうつ病になってしまった。それはそれで、私にとってはすごく悲しい出来事だったし、今でも悲しい出来事だと思う。でも、私はそのおかげで、何かのためにひまつぶしをして、その何かを大切に思う気持ちを持つチャンスを与えられたような気もする。今はそのチャンスを大切に思いながら、のんびりといろんな事にひまをつぶしながら、私だけの人生を進んでいけたらいいな。。。